2019年8月23日にようやく日本で発売されたHomePod。既にGoogleHomeで環境構築済みであること、スマートスピーカーとしては高額(税別32,800円)であることから購入を躊躇していましたが、好奇心が勝ってしまい購入したので、数日使用しての感想を中心にレビューとしてお届けします。
- 高偏位ウーファーによる迫力のある重低音
- マイクロフォンアレイが音を分析〜補正し、一貫した豊かなサウンドを再現
- 振動板を20mmで振動させることで、音量が低くても低音が際立つ
- 部屋中の音声を全て拾うことができる6つのマイクロフォン
- 高解像度のサウンドを360度の方向に届ける7つのビームフォーミングツイーター
- A8チップ内蔵にによりリアルタイムよりも高速なバッファリングを実現
目次
汚れなどを考えスペースグレイを選択、設置場所にはゆとりを
HomePodのカラーラインナップはスペースグレイとホワイトの2色。私もカラーの選択には非常に迷いましたが、側面360度のファブリックのメッシュ素材が経年劣化で汚れることを想定して、一番汚れが目立たないであろうスペースグレイをチョイスしました。
本体サイズは高さ17.2cm、幅14.2cmとスマートスピーカーの部類としては大きく、重量も2.5kgとズッシリしています。
設置場所については、音の跳ね返りによる音響自動解析の兼ね合いもあり、壁や隅から15〜30cm、少なくとも15cmの周囲には何も置かないよう推奨されています。
試しに「壁や隅から十分に離した位置」「2面が壁に接している位置」の2つの置き方で聴き比べたところ、音の広がり方が聴いてわかるレベルで違ったので、HomePodのポテンシャルを活かすのであれば、余裕のあるスペースへの設置は必須です。
振動減衰の役割を持つシリコンベース、油分の滲みに注意
内蔵ウーファーの振動減衰とHomePodの横滑り防止の役割を兼ねたシリコンベースの底面には、Appleのロゴマークが隠れています。
HomePodのシリコンベースには注意点もあり、木製のテーブルなどに設置するとシリコンベースの油分が染み出してしまい、家具にHomePodの跡が残る場合があるので、もし天然木や無垢材のテーブルなどに設置する場合は、マットを敷きHomePodを設置したほうが良いです。
振動減衰のシリコーンベースの付いたスピーカーの場合、木製の表面に設置したときに設置跡が薄く残るのは、稀ではありません。この跡は、シリコーンベースとテーブルの表面の間に油分が浸み出してできるもので、スピーカーを木製の表面から移動すれば、数日で消えます。
引用:Appleサポート
触ってわかるタフな電源コード、長さは約180cm
iPhoneやiPadの電源ケーブル(Lightningケーブル)はお世辞にも頑丈とは言えませんが、HomePodの電源ケーブルは触る限りでは頑丈そうで、ねじれにも強いです。
質感的にはコタツやアイロンなどの家電に使われる電源コード(編組袋打ちコード)に限りなく近い感じです。
ちなみにHomePodの電源ケーブルは最初から本体と繋がっていますが、強く引っ張ると取り外すこともできます。ただ、通常は電源ケーブルを取り外す機会は無く、あまり頻繁に着脱するものでは無いです。(断線時の修理交換を想定した作りだと思います)
HomePodのペアリングは簡単お手軽、説明書不要
HomePodの初期設定、iPhoneとのペアリングは本当に手軽にすることができるようになっており、HomePodを電源につなぎ、HomePod上部が白く点滅したあとにiPhoneを近づけるだけです。
iPhoneをHomePodに近づけるとHomePodの置き場所やパーソナルリクエストの許可などが求められるので、画面の指示通り進めるだけで簡単に設定できます。所要時間にして2〜3分程度でした。
音楽体験に力を入れたオーディオ機器寄りのスマートスピーカー
HomePodでできることは、主に「Apple Musicの音楽再生」「AirPlay2によるストリーミング再生」「Siriを使ったパーソナルリクエスト(電話、メッセージ、天気予報、タイマーなど)」「Siriを使った家電操作(HomeKit)」の4つ。
執筆時点では、他社スマートスピーカーのようにスキル開発などはできないので、ギークなことをして遊びたい人にはあまり向いていないと思います。「遊べるスマートスピーカー」では無く、「音楽体験に力を入れたオーディオ機器寄りのスマートスピーカー」と考えたほうが良いです。
音楽ソースはApple Musicのみ、その他音源はAirPlay2で
HomePodがサポートしている音楽ソースはApple Musicのみですが、iPhoneでSpotifyやYouTubeを再生し、コントロールセンターから再生デバイスをHomePodに切り替えることで、Apple Music以外の音源もHomePodで再生することができます。(AirPlay2)
ただし、「Hey Siri、Spotifyで音楽を再生して」とお願いしても、「私にはSpotifyからの再生はできません」と断られてしまうので、Apple Music以外の音源をHomePodで再生する場合、iPhoneを操作して好きな音楽を再生、AirPlay2で再生デバイスをHomePodに切り替える操作が必要になります。
このあたりの互換性については、今後のソフトウェアアップデートでの改善を期待して待つしか無く、現状ではApple Music専用機感が否めません。
HomePodの音質、低音と高音が強めのバランス
HomePodの製品ページで「低音」といった言葉が頻繁に出てくるように、低音域がかなり強めにチューニングされた音質です。
小さい筐体からは想像できないパワーのある低音が奏でられるので、BOSEなどの低音域に強いメーカーのスピーカーが好きな方であれば概ね気に入ると思います。
高音も低音に負けじとかなり強く、全体的にはドンシャリに分類される音質に感じました。中音のパワーが少し物足りなく、低音と高音に押しつぶされている感じがあり、中音(バック演奏弱め/ボーカルの歌声中心)が中心となる曲はチープに聴こえます。その反面、低音と高音が強いと楽しめるジャンルであるロックやEDMとは相性が良いです。
音の解像度は十分良く、音の輪郭もパキッと聞き取りやすいですが、パキッとした音質に低音域と高音域の強さが相まって、長時間音楽を聴いていると耳が疲れるような体感があります。個人的にはもう少しマイルドな方が好みです。
音質に関しては、今後イコライザー機能などが追加され好みに調整できるようになるのが理想ですが、HomePodは音質が自動調整されること、更にはiOSでも細かなイコライザー調整はできないので期待薄です。
追加されたとしても「Flat」「Acoustic」「Pop」などプリセット程度になりそうです。
Appleで上級副社長を務めるエディー・キュー氏はPollstarのカンファレンスにて「すべての楽曲はAppleの解析にもとづき、曲ごとにチューン(調整)される」と語っています。
引用:GIZMODO
HomePodの設置場所と防振シートの必要性
低音域が鳴り響く時の振動が強く、HomePodのシリコンベースだけでは振動減衰が不十分な印象を受けたので、もし振動が響きやすい天然木ガラスのデスクにHomePodを設置する予定であれば、別途オーディオ用防振シートなどを敷くと振動を軽減できるかと思います。
また別の設置方法として、スピーカースタンドに設置するのもおすすめです。HomePodの周囲15cm〜30cmを確保しやすいですし、低音の振動も軽減できるので一石二鳥です。私はハヤミ工産のSB-109にHomePodを乗せていますが、スタンド自体の安定感があるので良い感じです。
ただ、地震が起きた時の転倒〜転落が怖いので、L字金具かなにかでHomePodを固定できないか試行錯誤しようと思います。
曲ごとの音量の差が目立つ、今後改善して欲しい難点
HomePodでApple Musicを再生していると、曲ごとの音量の差が目立ちます。ホームアプリでHomePodの設定を開き、音量を自動調整をオンにすると多少軽減できますが、それでも音量の差が顕著にわかるので、今後のソフトウェア・アップデートで改善して欲しいところです。
決して悪い物では無いけど、全員に勧めることはできないHomePod
実際に数日間HomePodを使ってみましたが、全員に声を大にして勧められる物では無いといったのが正直な感想です。
HomePodは確かにスマートスピーカーの部類では圧倒的な音楽体験を得られますが、HomePod本来のポテンシャルを完全に活かすのであれば、SiriやHomeKitを使いこなすことが必須です。
もしSiriやHomeKit、AirPlay2をガンガン使いこなすのであれば、HomePodは良い選択になるかと思いますが、もし現状でSiriを使いこなせていない、あるいはSiri自体を使っていないのであれば税込35,424円の価値を見出すことは厳しいかな?と感じます。
SiriやHomeKitを普段から使っている、SiriやHomeKitを使った生活を構築したい、音質に優れたスマートスピーカーが欲しいといった方であれば、HomePodを前向きに検討しても良いかと思います。
もしSiriやHomeKitに興味が無く音楽再生だけが目的なのであれば、4万円前後で購入できるハイレゾ対応のコンポ、あるいはスピーカーも比較対象として検討してみると良いかと思います。
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